On a cup
トルコ北部のエルズルムという街で。
貧乏旅行の旅人の財布には風当たりの強い西ヨーロッパから東ヨーロッパに入りトルコへ。ジョージアに抜ける前に、エルズルムという街に寄った。何の予定もない着の身着のままの旅。今から思えば、実に贅沢な時間で、ああいう時間を持ったことを幸せに思う。
荷物を減らすために、なるべく暖かい場所を選んで移動をしていたが、エルズルムは標高が高い場所だったようで、雪を見ることになり、引き締まった空気を吸い込んだ。宿に出入りしていた誠実そうな顔つきの若い男が美大生だったようで、ほとんど言葉も分からないままに、彼の通う学校を案内してもらい、別れ際にどんぐりをもらった。ひまわりの種のように食すのかと思い、齧ってみたが歯で実を出すには硬すぎるし、味もうまいものには感じられず、結局なんだったのか分からないまま大量のどんぐりが残ることになった。