At Camino de Santiago

マリから飛行機で、この旅2度目となる西ヨーロッパへ戻って来た。
西ヨーロッパの後にはいよいよアメリカへ行くことを考えていた。しかしすぐに行ってしまうと寒いニューヨークを過ごすことになる。想像するニューヨークの寒さは厳しそうだし、コートなんかを持っている旅ではなかった。

スペインの西の街サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す、聖ヤコブが歩いたという道を辿る巡礼路があるらしい。道中では巡礼用の宿泊所や教会に泊まることもできて、食事も提供されると聞いた。私が選んだ出発点は牛追い祭りで聞いたことのあるパンプローナというフランスとの国境近くの街。ここからだと約800kmの道のり。1日30km歩けば1ヶ月くらい時間を潰すことができる。

巡礼で使わないものはゴールのカミーノ・デ・サンティアゴへ郵送したものの、大きな荷物を背負っての巡礼は簡単なものではなかった。ちょうど私の歩いた時期は2月だったのでオフシーズン。人の数は少なく、宿泊所も閉まっているところがあり、その日の目的地と決めていた場所まで来ても泊まる場所が見つからず、重たい足をひきずって次の町まで歩かなければいけない、なんてこともあった。こんな時期に来ているのはよっぽど熱狂的なファンか私のような酔狂な人間だけだったようだ。おかげで、面白い人達と時間を分け合うことができた。

ダイエットが目的だという体が大きく、顎にピアスを入れたかわいらしいジュリエットというベルギー人。ジュリエットとは何日か一緒に歩いていたが、突然業を煮やして「私はバスに乗ってゴールへ行く。」と言い出し、サンティアゴ・デ・コンポステーラから2段に積み上げたアイスクリームを嬉しそうに食べる写真を送ってくれた。素敵なダイエット。

バルセロナから来た初老の男性はカミーノ(道という意味で、ここを歩いている人たちは「カミーノ」と呼び合い、「ブエン・カミーノ!(良い巡礼を!)」と言って称え合う)の2往復目をしているという、なかなかの変わり者だった。ある日、この男性や他のピルグリム(巡礼者)たちと同じ宿に泊まり、夕食をともにすることになった。するとこの男性が宿の冷蔵庫の中に残っていたシーフードや米をつかって、実にうまいパエージャを作る料理の腕前を披露してくれた。旅慣れたイカした男性だった。

アジア人はほとんどいなかったが、一人だけ異常に寡黙な韓国人男性とも出会った。彼は私よりも歩くペースがうんと速く、私を追い越してちょうど次の宿泊所につくと同じ場所に泊まっている。会話のきっかけをつかもうと話しかけてみるが、ろくな答えが帰ってこないので話しをするのを諦めて、大きな教会の中でスケッチをしていると、たまたま同じ教会の中に入ってきた彼は、あれだけ私に興味がない態度をとっていたのに、どういうわけだが私の隣に腰を降ろし、そしてまた黙り続けた。

Castrojerizという街の風景
Castrojerizという街の風景
教会に巣をつくった鳥
教会に巣をつくった鳥
Sahagúnという街の彫像
Sahagúnという街の彫像