グルアイさん

105x48cm

チェンマイでの生活では、どうせならタイ語を勉強しようと、YMCAのグループレッスンに通った。
初日の授業では先生がA4の用紙に描かれたペンや家の絵を皆に見せて、「Pakaa」や「Baan」と言った後に、生徒全員で声に出して復唱するというようなレッスンだった。生徒全員と言っても全部で7人ほど。私以外は全員白人の50代を越えるような人たちだった。今思えば、老後の生活の場所を求めてきている人たちだったのかもしれない。

そんな子供じみていると言えるレッスンにほとんどの生徒は付き合って「Pakaa」とか「Baan」を繰り返していたが、ひとりだけそれを拒否して、先生の「Pakaa」の後に続かずに黙っているおばさんがいた。先生も食い下がって「リピート・アフター・ミー」といって「Pakaa」を繰り返したが、頑ななおばさんは最後まで黙りとおした。まだ若い先生は涙ぐんでしまっていた。2日目からその白人女性はレッスンには現れなかった。

大人になってからの言語習得の邪魔になるのはプライドであると思う。いい大人になって知らないとか上手にできないってことを恥ずかしがるから、口を開かないんだけど、口を開かないから上手にならない。日本人でも良くいるんだ。そういうのに限って、英語も上手じゃないから日本語でタイ人を説教したりして。まったく。